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ご挨拶_____複合ラグーン技術情報〔1_____連絡先





複合ラグーン技術ノ−ト〔1〕
"
脱窒素処理技術の基礎と概要"


複合ラグーン


7. 複合ラグーン〔Hybrid-Lagoon〕の原理

浮遊微生物処理の基本原理は.汚水と浮遊微生物を一定時間・均一に撹拌し浮遊微生物が汚水処理に必要とする酸素を供給する事である。経済的で機能的な廃水処理技術の基本的条件は以下の通りである。

  1. 構造が単純で建設費用が低廉な微生物反応槽〔槽構造〕

  2. 少ない動力で均一に混和する水利形状〔水利モデル〕

  3. 効率が良く制御可能な曝気装置〔曝気システム〕

  4. 微生物処理の状況を正確に判断する装置

〔計測・自動制御〔 automatic-control〕システム〕
複合ラグーン方式は.前記の条件を解決し、新しい槽構造・水利モデル・曝気方式・計測自動方式による脱窒素技術である。

連続式3段階処理方式〔EPA〕と複合ラグーン自動制御方式の比較図





8. 複合ラグーン処理法

複合ラグーンによる廃水処理方式は、原則として単一槽を使用し、原水流入・曝気・沈澱・上澄水放流をエンドレスに繰り返す.半回分式活性汚泥法〔非連続処理〕である。

非連続処理模式図(半回分式活性汚泥法)



単一槽のみで廃水処理を行うので.連続式活性汚泥法に必要な最終沈澱槽・返送汚泥装置が不要になり施設の構造は極めて単純になり使用機器の数も少なく配 管・電気系統も簡単になる。更に複合ラグーンには高度処理機能があり三次処理施設は不要で、単一槽で脱窒素処理が可能である。



9. 複合ラグーン槽構造〔断面・平面〕

複合ラグーン槽の基本構造の断面は逆円錐台形で.槽の中央を深く掘削し垂直方向に汚泥が滑らかに循環する形状とする。複合ラグーン底部の広さ・中心部から 周辺に至る傾斜角度は.複合ラグーン全体の形状・規模・汚泥の基質特性によって異なる.複合ラグーンは従来の曝気ラグーンの水深より深層化が可能で.垂直 曝気機器の特性によって最大水深10mを越す深層ラグーンが可能である。




複合ラグーンの平面形状は.自然の形状・敷地の形状を生かして.円・長円・楕円・変形多角形は自由である.但し複合ラグーンの周辺形状は.不整流・乱流が発生しないように湾曲部分は滑らかな形状とする。〔写真1024



10. 複合ラグーン遮水方法と素掘り池

複合ラグーンの擁壁・底盤はRC構造〔剛構造〕とし.斜面部分の遮水工事は、柔らかい構造〔アスフアルトシート工法その他〕とする事を原則する。







微生物の生活空間としては.素掘の複合ラグーンのほうがコンクリートで囲まれた空間より良好で.1980/5 12月稼動した栃木県滝沢ハム泉川工場の素掘りの複合ラグーン施設〔写真 79 〕では活性汚泥の外にも多種多様な生物相〔水中昆虫・食用蛙・家鴨・白鷺等鳥〕によって自然に近い終末処理施設となった。素掘の複合ラグーンは構造が単純 で建設も容易だが. 機能的にも経済的にも優れ. 現在社会が要望する高度処理機能を持つことが出来る。〔本文 172.






11. 複合ラグーン水利モデル・撹拌特性

問:複合ラグーン処理方式に適した水利モデルはどのような水利モデルか ?

答:複合ラグーン処理方式に適した水利モデルの条件を列記すると以下の通りである。

  • 沈澱時間に沈んだ底部の汚泥を確実に槽全体に拡散させる事

  • 完全混和に必要な時間が短く.撹拌効率の良い事

  • 曝気動力量を削減した場合でも完全混和の条件が崩れない事

  • 槽構造が単純で. 建設が容易な事 

  1. 複合ラグーン施設は単一槽で曝気槽と最終沈澱槽を兼用する為、沈澱時間に底部に沈澱した汚泥を少ない動力で速やかに槽全体に拡散させる事が半回分 式処理施設の水利モデルの基本的条件である。又 活性汚泥と被処理水を完全に混和する事は計測制御と良い処理水を得るための要件でもある。

  2. 循環水路形施設と表面機械曝気による都賀農場低負荷・半回分処理施設の運転実績から水深の浅い水路施設では部分的に汚泥が堆積し.沈澱 汚泥が混和するためかなりの時間を要する事が判明した水路形式の撹拌効率は定格動力量1kW当たり553程度であり. 予想以下の効率であった。滝沢ハム泉川工場複合ラグーン施設の撹拌効率は.定格動力量1kW当たり 2113に達する高い撹拌効率を示している。〔写真1012

  3. 従って循環水路施設では流入負荷の変動・微生物処理の状況に応じて曝気動力量を制御すると不完全混和になり曝気制御は不可能であった。 滝沢ハム泉川工場複合ラグーン施設は設計動力量68.5kw58.3m3/kW〕から動力量19.0kw211m3/kW〕まで曝気制御が可能である。

  4. 複合ラグーン施設は.箱型水利モデル施設の数分の一の費用で建設する事が出来る。 



12. 複合ラグーン曝気方式・加圧曝気

複合ラグーンの曝気方式は.原則として槽の中心底部に所要の曝気レーターを配置し垂直曝気システムを形成する.この垂直曝気システムによって少ない動力量 で底部の汚泥を槽全体に急速に拡散する。更に複合ラグーン槽の周辺・表面に設置した所要の機械曝気機器によって、水平曝気システムを構成して複合ラグーン の表面流が周囲にそって一定方向に流れるようにしたのが複合ラグーン槽の曝気システムである。

こうした垂直・水平曝気を組み合わせた複合曝気方式によって複合ラグーン処理方式に必要な撹拌特性と曝気効率を得ている。

複合ラグーン曝気システム模式図



複合ラグーン施設の敷地面積を削減する方法として槽を.更に深層化し高い曝気効率と. 高度処理に必要な制御特性を得るために.加圧曝気方式が開発された〔写真3439〕その結果. 最大水深 9m 直径32m容量 4,000m3の複合ラグーン施設が建設され稼動している。〔写真19.50.

加圧曝気方式は. 酸素導入効率を低下させず吹き込み風量を制御することが容易で脱窒素処理に必要な柔軟な曝気制御が可能になった。 その結果として

  1. 高度処理に要するエネルギーを削減する事

  2. 曝気機器設備・建設費用を削減する効果がある。

  3. 流入負荷に変動に対して効率良く制御する事が可能になった。

追記 1999年現在、水深10mの複合ラグーンは下記の理由で設計していない。

  • 複合ラグーン形状"逆円錐台形"は水深を深くしても槽有効容量が増えない。

  • 水深を深くすると汎用機器が使えず曝気機器が高額になる。




13.
複合ラグーンの自動制御法〔1〕原理
"
非数学的アルゴリズムによる微生物脱窒素機能最適化理論"

複合ラグーンの自動制御法は. 処理槽内の微生物処理の状況を各種センサーで計測し.非数学的アルゴリズムによる脱窒素機能を最適化し微生物の硝化・脱硝作用を正確に制御するシステムである。

複合ラグーン施設における基本的計測項目は下記の通りである。

  1. 溶存酸素濃度〔dissolved oxygen0 15mg/l

  2. 酸化還元電位〔oxidation-reduction potential±1000mv

  3. 水素イオン濃度〔hydrogen-ion concentration 1 14 〕

  4. 気温/ 水温〔temp. 20〜+80℃ 〕

  5. 各ポンプ機器〔kW×hr≒kWh/d


こうした特性の異なった計測センサ−の波形をクロスチェクし、処理槽の微生物反応をリアルタイムで正確は判断する事が出来る。溶存酸素濃度波形特性は以下の通りである。




14 複合ラグーン自動制御法〔2〕学習制御
"
学習制御とアロステリック相互作用の回避"

複合ラグーン活性汚泥処理方式に於ける. 計測波形には極めて正確な相関関係がありアルゴリズム〔algorithm 〕が成立する。従ってこの計測波形から正確に微生物処理の最適条件を再現する事が可能である。 溶存酸素濃度波形から見た流入負荷量は.D>C>B>A である。






model

負荷量

曝気動力量

自動制御

A

削減

可能

B

軽負荷

削減

可能

C

適正

普遍

可能

D

過負荷

増加+

補正可

複合ラグーン自動制御の基本原理は、微生物のアロステリック相互作用・逐次反応〔 consecutive reaction.〕特性・微生物系の適応に要する時間の遅れ々を配慮した学習制御法〔 learning theory. 〕を採用している。微生物反応プログラムの作成・及びプログラム適否の判定には.一般微生物学に関する知識と.技術ノウハウを必要とする。






15. 分散処理・集中管理システム

図形化した微生物反応の情報を. 電話等の通信回線を使用して転送することによって遠隔地で複合ラグーン施設をモニタリング〔遠隔監視〕する事が出来る。今後下水道が中小都市から農山村・ 漁村に普及する場合 本情報処理システムを活用すれば広域に分散した終末処理施設の集中管理する事が出来る。



自動制御〔automatic-control〕システム 及び、情報処理システム・ブロック模式図





16. 複合ラグーン自動制御技術の特徴

活性汚泥〔微生物〕で窒素が除去出来るかとゆう技術課題から始まった研究は、硝化脱硝作用に関する特異な微生物機能の検索に始まり、微生物による脱窒素反 応に必要な水利モデル・計測システム・曝気方式を開発した結果. 最終的には極めて単純な構造の複合ラグーン槽と. 計測波形を解析する自動制御方法を組み合わせた複合ラグーン・自動制御システムとなった。

複合ラグーン技術は、原則として単一槽のみを使用して二次三次処理〔高度処理〕を行い、微生物の脱窒素反応は二次処理に使う曝気動力量を正確に制御する事 のみで行いメタノール等炭素源添加・汚泥循環は行わない. 従って二次処理に要する施設費用・エネルギーで生物的脱窒素処理〔三次処理〕が可能である。

汚水処理技術・比較一覧表

比較項目

複合ラグーン法

標準型活性汚泥法

OD

処理方法

半回分式処理

連続処理

連続処理

汎用性

有る

無し

無し

構造

単純

複雑

単純

面積

標準

標準

広い

建設費用

安い

高い

安い

処理動力量

少ない

多い

多い

脱窒素機能

9598%

2030%

4050%

脱燐機能

6075%

不定

不定

希釈水使用

不要

必要

必要

余剰汚泥発生率

少ない

多い

少ない

平均水深

49m

34m

34m

負荷変動

安定

常駐管理

安定

自動制御

可能

不可能

不可能



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